やまださんちのてんきよほう (作 長谷川 義史)


谷畑 二郎

今年も夏は暑かった。毎日35度近くまで気温が上がるんですから。しかもマスクをしなきゃならない。命を守るって大変なことです。

 僕は天気予報が好きなので、毎日何回も見てしまいます。ああ、今夜も熱帯夜か。明日は体温並みの気温か・・・と、ため息の毎日でした。

しかも大型の台風が発生するので、その進路がとても気になりました。昔と違って、天気予報の精度もかなり高くなったので結構当たります。

でも100%とはいきませんね。だって天気には「局地的」という裏ワザ

があって、これがなかなかのクセモノです。科学がどれだけ進歩しても、天気にしてみれば「人間なんてたかが400万年の歴史じゃないか。

僕は地球ができた40億年前からやってるんだい!」と胸を張っていることでしょう。気象庁の親睦野球大会が、雨で中止になるくらいですからね。キャリアが違います。

 さて今回の絵本は『やまださんちのてんきよほう』(長谷川義史・作)です。全国の天気じゃありません。山田さんちだけの、超局地的なお天気です。しかも、めまぐるしく天気が変わります。

 朝からいい天気と思いきや、ふとんの中は「洪水」。お母さんは洗濯で大忙し。まさに「台風」。回覧板を持ってきた、お隣の奥さんの頭は「竜巻」。お昼ご飯は「はるさめ」。おばあちゃんのおやつは「みぞれ」。おじいちゃんは「あられ」。お米を配達に来たお米屋の大将、カツラがおちて「地すべり」。散らかり放題の部屋を見て、お母さんは「かみなり!」

 笑ってばかりじゃいられません。長谷川さんの絵本は油断禁物です。泥棒が山田さんちを狙っているのです。しかも古臭い、今どきこんな恰好した泥棒はいませんというファッションです。さらにもうひとつ。おやつを食べているおじいちゃんの横に注目。畳の上に何気なく置かれた絵本『パパとぼく』は、長谷川さんの奥さん、あおきひろえさんのデビュー作ですぞ。これは夫婦愛か?出版社、絵本館の陰謀か・・・?