わにさんどきっ はいしゃさんどきっ (作 五味 太郎)


谷畑 二郎

 

落語家桂米團治をご存じですか?彼の父親は人間国宝・桂米朝です。

 

米團治は高座に上がると、よく父親の話をしていました。「うちとこは親子でも、師弟関係ですから、普段から敬語でしゃべってます。親子で

 

敬語を使っているのは、うちとこと皇室だけです。」とか「うちの人間国宝、陰で何やってるかわかりまへん」と笑わせておいて、今度はまじめ

 

な顔で、「うちの親父は、虫歯が一本もないんです」というと「ほおう」と会場から感嘆の声が上がる。

 

そこですかさず「総入れ歯ですから」

 

 実は僕も、虫歯ゼロなんです。でも総入れ歯じゃありませんよ。定期検査に通っているので、その都度治してもらうんです。つまり、口の中

 

は工事現場みたいなもんです。一応虫歯ゼロ。

 

 歯医者さんの絵本といえば、何といって『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』(五味 太郎 作)、これです。歯が痛くなったわにさん、仕方なく

 

歯医者さんに行きます。歯医者さんは趣味の機械いじりなんかやっている。

 

何が素晴らしいといって、わにさんと歯医者さん、立場が全く逆なのに・・・

 

「ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃいけないね」

 

「どきっ」

 

「どうしよう・・・」

 

「こわいなあ・・・」

 

「でも がんばるぞ」

 

「かくごは できた」

 

「いたい!」と治療は進んでいき、

 

「たいへん しつれい しました いずれ また」

 

「いやいや もう にどと あいたくないね」

 

「だから はみがき はみがき」

 

治療する方もさえる方も、同じ台詞なんです。絵本を読むたびに、五味太郎愛が高まります。

 

 ほかにも、歯医者さんの絵本はありますが、僕の知っている2冊は、先生がシカなんですよねえ。

 

歯科だからシカ・・? それシカんでしょうか?