UFO情報のいま・むかし

昔の議論

最近また、頻りにUFOの話題が聞かれるようです。近年は宇宙物理学や宇宙観測の大きな進歩があって、一昔前に比べると宇宙に関する理解も大いに進みました。そういう新たな知識によって、いまのUFO議論は昔に比べて大いに深化しているといえます。

30年程前のブームの頃にも、UFOをテーマとするテレビ番組などがよく見られました。その種の番組では、UFOがいると主張する出演者は、「そんな非科学的なことをいうのは良識あるまともな人間ではない…」という感じで厳しく批判されていました。その批判の急先鋒はいつも元早稲田大学教授の大槻義彦さんで、もう一人は俳優の松尾貴史さんだったと記憶しています。何せ四半世紀ほど前のことなので、定かではありませんが、どうして学者でもない人があれほど確信を持って批判する根拠は? と感じた記憶があります。

学を究めたと自負している学者というのは、自分の学識の範囲を超えると、それは非科学的と言って切り捨てることが多く、その代表的な事例は「森林太郎(鴎外)」でしょう。

彼はドイツに留学し最先端の医学を学んできたことに自信を持っていました。ちょうど日露戦争が始まって、軍隊で「脚気」が蔓延しました。その時に海軍医務局長(高木兼寛)が、麦飯を食べたら治るという昔からの言い伝えを試したら、陸軍軍医総監であった森は、そんな非科学的なことは陸軍では採用しないと切り捨てたそうです。その結果、日露戦争で陸軍の兵隊の死亡者数は、戦闘より脚気による方が多かったと聞きました。一方、海軍では脚気で死んだ者はいなかったということです。脚気の原因がビタミンB12の欠乏であることがその後の研究で解明され、いまは誰でも知っています。森が学んだ、当時最新であったドイツの医学では、まだビタミンの存在は知られていなかった時代です。

近年のUFP事情

科学は絶えず進歩していますが、特に近年の進歩は顕著です。医学もそうですが、宇宙に関してはアインシュタインの「一般相対性理論」以来、時間、空間についての理解が進みました。また、観測技術も大きく進歩したので、世界各地でUFOらしきものを見たという報告が聞かれるようになってきました。その多くは、明らかに見間違いと分かるものですが、ある割合で説明が付かない観察報告があるのも事実です。そこで、高名な宇宙物理学であるハーバード大学のローブ博士は、最近話題になった数百件のUFP(未解明飛行現象:Unidentified Flying Phenomenon)目撃情報を、系統的、科学的な手法で評価するため、「ガリレオ・プロジェクト」を立ち上げたそうです。

今の段階でのUFO(またはUFP)の存在に関する宇宙科学の専門家の見方は、①“無数の星の中には生命体の存在する星がいくつもあって不思議ではない、②しかし、彼らが惑星間旅行をして地球にまで来る可能性は考えにくい”というものです。さらにローブ氏は、③生命体自体が来るのは無理だとしても、観測されるUFPは地球外生命体が送ってきた「宇宙探査機」である可能性が高い、と解釈しています。改めて大槻教授の意見を聞きたいものですが…。

筆者の想像

観察している宇宙人

宇宙といったテーマについては全く門外漢ではありますが、素人なりの空想をしてみるのは楽しいことです。UFOが相当数観察されているのに、姿をチラ見せするだけで一定以上近づいてこないのは何故か? それは、“遠くから観察はしても直接の関りを持つ気はない”という意図と解釈しています。惑星間旅行ができるほどの高度な科学技術があるということは、その背景として高度に発展した文明・文化があるということでしょう。それが可能なのは、長い平和な社会が続くことです。争いばかりしていてはそんな高度な文明が育つわけがないでしょう。

そのような高度文明を持つ彼らが、地球外から、または観測衛星によって観察している理由は何でしょうか? それは、人類という地球生命体がどのように進化していくのかに興味を持っているからではないでしょうか。多分、地球という環境とそこで進化する生命体の共進化がどう進むかに興味があるのでしょう。ある進化の段階までは数理シミュレーションしているはずですが、その生命体が意識を持ち始めて、自らの意思で環境に影響を与えたり、自分たちの文明の方向を自らの意思で変えることができる進化段階になると、予測は困難になります。そこで、実際に観察するしかないということで、興味を持って見守っているのでしょう。十分距離を置いて、一定以上近づいてこないのは、地球人の進化過程に影響を与えないためでしょう。

彼らの観察結果は?

これまでの観察で、宇宙人はどんな観察結果を得たのでしょう? きっと一番の関心は、人類という生命体が進化して、弱肉強食のレベルを脱することができるのかどうか、ということではないでしょうか。結構立派な姿形に進化したのに、なかなか弱者からの収奪を止めることができないことを不思議がっているのではないでしょうか。しかも、その収奪争いの中でエネルギー(化石資源由来の)を大量に消費し、その結果、地球の気候メカニズムを崩壊させるところまで来ているのに、我欲に取りつかれた人類は改めることができずに争いを続けています。偶々そのような利害には捕らわれない若者がその暴挙を指弾しても、既得権益を放せない大人たちはその指摘に耳を貸そうとしません。

これを観察していた宇宙人は、“地球環境を崩壊させ、これを止められるようになるまでに人類が進化する時間はない”と見切りをつけたのではないでしょうか。そう見切りを付けたので、もう注意深く距離を置いて観察することは放棄し、姿を見せ始めた…という気がします。地球外から攻撃する振りをしたら、人間同士の争いは止めるだろうが、それで新たな宇宙大戦争だと言ってUFOとの闘いに邁進してくるなら、決して平和の果実を手にすることはできないでしょう。

折角ここまで進化したのに、もう一歩のところで破局に直面して、それを回避する叡智には達しないと見極めたのでしょう。沢山の星の中には、火星のように細菌のレベルでその環境を自らの生存に適さないように変えてしまって、死滅したものもあるようです。火星の場合は、細菌レベルの無意識の行動で絶滅しましたが、地球の場合はもう少し高度な意識・思考のレベルまでいったのに、その思考を人類全体の持続に生かすところまでは行かなかったという、残念な例として記録されることでしょう。